身体を動かすことの重要性はいくら強調しても強調しすぎることはありません。
しかし、我々はともすれば楽な方に流れてしまうので、相当意識しておかないと身体を動かす機会がどんどん減少していきます。
特に定年退職後、これまでのように毎日会社に行かなくなったりすると、通勤時に自動的に行っていた運動ができなくなります。運動不足の状態が続くと「筋肉が衰える」→「すぐ疲れる」→「その結果、ますます動かなくなる」という悪循環に陥ってしまいます。特に座りっぱなしの時間が長いと、「代謝機能の悪化」、「血流の低下」、「血圧の上昇」などにより、「肥満」や「心疾患」、「うつ」などの発症リスクが高まるとも言われています。
運動の効用
逆に運動の効用は沢山あります。
体調が良くなるのは勿論、運動すると脳の働きが活性化すると言われています。よく散歩中にアイデアが閃くという話を聞きます。ベートーヴェンは散歩中に作曲したとか、カントは規則正しい散歩を欠かさなかったなどは有名な話です。かのスティーヴ・ジョブズも散歩が大好きだったと言われています。
「スマホ脳」で有名なアンデシュ・ハンセンの「運動脳」という本があります。
運動すると脳に好影響をもたらし、「老化防止」、「集中力の強化」、「ストレスの減少」などの効用があると書かれています。この本を読むと「絶対に有酸素運動をしよう!」という強い思いが沸き上がります。
・脳にとっての最高のエクササイズは身体を動かすこと
・身体を動かすと、気分が晴れやかになるだけでなく、あらゆる認知機能が向上する。記憶力が改善し、注意力が研ぎ澄まされ、創造性が高まる。
・どんな運動をするか、どこで運動をするかは重要ではない。重要なのは、とにかく運動することだ。
・根気よく、決してあきらめず、とにかく続けよう。脳が再構築されて構造が変化するまでには時間がかかる。・週に数回の運動を半年ほど続ければ、目覚ましい変化を実感することだろう。
アンデシュ・ハンセン「運動脳」
運動不足の認識
さて、生活が便利になると段々身体を動かさなくなります。例えば、階段があってもエスカレーターやエレベーターを使う。自転車も電動で自力で漕がない。掃除もロボットにやってもらう。更に、コロナ後は在宅勤務の機会が増え、出張もリモートになるなど、わざわざ出向いていかなくてもネットでこと足りるようになりました。
これはまずいと思う人は、フィットネスクラブに通って走ったり歩いたりという対策を講じる訳です。
運動が続かない理由
ところがなかなか続かないのです。
何故かというと、わざわざ時間をとって運動するのが面倒臭いからではないでしょうか。
ですので、対策は二つ。「わざわざ」をなくすか、「面倒くさい」をなくすことです。
ここをクリアするとうまく習慣化されて、やらないと気持悪いという状態になります。
歯磨きと同じです。考えてみれば歯磨きも面倒だけど、習慣化されているし、磨かないと気持ち悪いし、虫歯や歯周病になると思うから、何も考えなくても続けることができています。運動も同じです。
わざわざをなくす
「わざわざ」をなくすと、「わざわざやらないといけない」という心理的負担がなくなります。否応なく運動する状況を強制的につくる方法です。
例えば、「電車に乗ったら必ず一つ手前の駅で降りて歩く」、「ランチタイムには必ずウォーキングする」、「スーパーには歩いて行く」、「走ってギリギリ電車に間に合う時間に敢えて家を出る」など、なんでもいいので日常生活の中に組み込んでいけるものを探してみましょう。
そして、成果を「見える化」するとモチベーションが上がります。スマートフォンで歩数やカロリーが簡単に測れるので、記録を継続して取っていくと、そのこと自体が面白くなってきます。「レコーディング・ダイエット」と同じです。すると、今日は歩いてないとか、逆によく歩いたとかが一目でわかりますし、休みの日は歩数がぐっと減るなど自分の傾向が分かってきます。不思議なもので、続けていると、「今日は歩数が少ないから散歩に行こうかな」と思ったりするものです。
面倒くさいをなくす
フィットネスクラブは幽霊会員で成り立っていると言われますが、気合を入れて入会しても続かない人が多いようです。しかし、毎日のように通っている人もいますから、「いつものメンバーに会える」、「段々上手くなっているように感じる」など、楽しいことがあると続くのではないでしょうか。よく聞くのが、「今日はしんどいから休もうかと思ったが、来たら楽しい。やっぱり来てよかった」という話です。
ジムで走るなり筋トレするなりエアロビクスをするなりして快感を得て、運動しないと気持ち悪くなるという状態になると続きます。
時間の問題もあります。せっかくフィットネスクラブに入会したのに忙しくて行く時間がないというのもよく聞く話です。最近は、24時間いつでも行けるジムも増えてきました。また同じコンセプトでオンラインジムというのもあります。
但し、落とし穴があって、「いつでも行けると思うとついつい行かない」というパターンです。また、オンラインジムは、「家ではどうも気分が乗らない」という問題もあります。こういうのは受験勉強と一緒で、図書館や予備校の自習室ならやるけど家ではやらないというのと同じではないでしょうか。
フィットネスクラブのグループレッスンのように決まった時間に行くのはハードルが高いので、いつでも行けるジムへ兎に角、週2回か3回ほど行ってみる。その結果、運動することが気持ちよくなると、後は自動的に続いていくように思います。まずは始めてみましょう。