均等法第1期生が、今年度60歳の定年を迎えます。
「定年後」って、なんだかよく分からなくて不安になりますよね。
世の中には数多の「定年本」がありますが、どちらかというと男性目線。
定年女子はまだまだ少数派なので身近にロールモデルがいない人も多いでしょう。
人生のセカンドステージに踏み出す前に、今からやっておきたい3つの定年準備項目をまとめてみました。
*男女雇用機会均等法は1986年施行。この年22歳大卒で就職した女性は今年60歳の定年を迎える。
この記事は次のような人におすすめめです。
- もうすぐ定年を迎える
- 定年後のお金が心配
- 定年後も働くかどうか迷っている
- 定年後どうしたらいいか分からない
1.定年後の不安は未体験なことへの不安
そもそもどうして定年後が不安なのでしょう。答えは簡単、誰も定年後の経験がないからです。いくら想像してみても、体験したことがないことが不安なのは当たり前ですよね。
定年というのは年齢を理由に、会社との関係が強制的に切れてしまうことです。
私たちは60歳になったからと言って急に変わる訳ではありません。
しかし定年退職すると、これまで定期的に受け取っていた給料、会社で過ごす1日8時間+αの時間、社会や人とのつながりなどと縁が切れてしまいます。
定年後の不安とは、会社で働くのが当たり前という状況から、体験したことのない新たなステージへ進むことへの不安、つまり、よく知っている世界から、未体験の新しい世界に踏み出すことへの不安ではないでしょうか。
2.定年までにやっておきたい3つの準備
定年が視野に入ってきたときよく聞くのは
給料がなくなって65歳まで年金も受け取れない。
今の貯蓄でこの先大丈夫だろうか・・・
60歳といってもまだまだ若い。
もっと働きたいんだけど・・・
仕事を辞めたら、時間を持て余すのではないか・・・
不安を拭い去るために以下の準備をしておきましょう
準備1 今後必要なお金を確認する
準備2 いつまで働くか、どんな働き方をするか考える
準備3 時間の使い方を考える
順番に見ていきましょう。
準備1 今後必要なお金を確認する
定年退職の一番の不安は、定期収入がなくなることです。今の収入がなくなってもやっていけるか、まずは老後資金を確認しましょう。
やり方は簡単です。ライフプランを作成して、お金の動きを見える化しましょう。
ライフプランを作成する
☆ライフプランの作り方
① 将来の年表を作る
② 想定される収入を記入する
③ 想定される支出を記入する
④ 年間収支を計算する
⑤ 貯蓄残高を加える
① 将来の年表を作る
今の年齢をスタートに、自分が生きるつもりの年齢までの年表を作って、想定されるライフイベントを書き込んでいきます。
例えば退職、再就職、完全リタイア、年金受取開始
子どもの結婚、孫の誕生、孫の入学
住宅ローン完済、家のリフォーム、車の買い替え、海外旅行、施設入所などです。
願望も含め欲張りプランにしましょう。
② 想定される収入を記入する
定年退職後も働くならば働いて得るお金
配当所得など自分が働かなくても入ってくるお金があればその収入
原則65歳から受け取れる公的年金や、個人年金などの収入です。
*1962年4月2日~1964年4月1日生まれの女性は63歳から特別支給の老齢厚生年金が受け取れます。
退職時に受け取る退職金は、むしろ貯蓄に分類した方がいいかもしれませんね。
③ 想定される支出を記入する
毎月の生活費やローン返済額、保険や税金など定期的に発生する支出
①の年表で見込んだ様々なイベントにかかるお金(海外旅行、家のリフォームや、施設入所など)を記入していきましょう。今のご時世、物価上昇も考慮しておきましょう。
④ 年間収支を計算する
「収入―支出」で、年間収支を計算します。
⑤ 貯蓄残高を加える
貯蓄は運用益を考慮しておきましょう。例えば3%程度の利回りを想定しておくといいでしょう。
最後に、貯蓄残高と④で計算した年間収支を合計します。この額が赤字にならなければ老後破綻は免れます。
不足額の対策を考える
貯蓄を加えても収支が赤字になったらどうすればいいのでしょう。
方法は3つ
① 収入を増やす
② 支出を減らす
③ 資産を運用する
これらの方法を組み合わせて、収入+貯蓄≧支出 になるようにプランニングしていきましょう。
収入を増やすためには、定年後もしばらく働くという選択になるでしょう。
どの程度の期間どういう働き方をすればどのくらいの収入が得られるかを考えます。たとえ僅かではあってもフローの収入が継続的にあると精神的に非常に安心できます。
もし、年金を受け取れる年齢になった時にも働いた収入で生活できるなら、年金を繰り下げるという方法も選択できます。65歳から受け取る年金を70歳まで繰り下げると受け取る額は42%アップします。
支出を減らすには、保険の見直しや無駄な生活費の見直しが必要でしょう。しかし、闇雲に生活を切り詰めることはおすすめしません。
年齢を重ねると自然と生活がコンパクトになるので若い時ほどお金は使わずに暮らしている人も多いです。
貯蓄を増やすには利回りのいい投資をすることです。NISAやiDeCoといった税制上有利な制度も積極的に活用しましょう。
その結果、例えば2000万円不足するならば、「年収200万で後10年働こうか」といった方向性が見えてきます。
勿論、先のことはわからないので、今の時点では何となくこんな感じかなというだけで十分です。大まかな方向性が見えれば大丈夫です。
ここで一つ重要なポイントは、お金は使ってこそ意味があるということです。
無暗にため込んでも仕方がありません。不測の事項に備えて幾らかの貯金は必要ですが、自分が貯めたお金です。自分で好きなように使いましょう。
準備2 いつまで働くか、どんな働き方をするか考える
「労働力調査」(総務省)によると、令和4年のデータで、60~64歳の73%、65~69歳の50.8%の人が働いています。
働くことはお金のためだけではありません、「社会や人とのつながり」「人のために役立つことの喜び」「自分の能力を発揮する喜び」「規則正しい生活」「居場所を作る」など理由は人それぞれです。
65歳くらいまでは経済的理由がトップですが、それ以上になると「生きがい」や「社会参加」、「健康のため」といった理由が高まる傾向にあるようです。
たとえ十分な貯蓄があるとしても、取り崩すばかりだとストレスが溜まります。精神的な余裕のためにできる範囲で働くのもおすすめです。
一般的に退職後の働き方は大きく分けて以下の3パターンがあります。それぞれメリットデメリットを比較して、自分にあった働き方を選択しましょう。
- 再雇用
- 転職
- 起業
① 再雇用
再雇用とは、今、働いている会社でそのまま継続して働くことです。高齢者雇用安定法では65歳までの雇用確保(義務)、70歳までの就業確保(努力義務)が定められています。実際大企業の場合、約9割が再雇用を選ぶと言われています。ただし一旦退職しての再雇用という形になるので多くの場合給料が5割~7割程度下がったり、役職も基本的になくなります。またフルタイムを選択できるところもありますが週4日とか3日の勤務となる場合もあります。
メリットとしては、同じ会社なので、部署が変わるとしても仕事の内容や人間関係もほぼ分かっているという安心感があるでしょう。しかし、「同じような仕事をしているのに給料が下がることが納得できない」、「昔の部下が上司になると居心地が悪い」ということが起こり得ます。そして再雇用は多くの場合概ね65歳で終了します。(今後は70歳まで延長になるかもしれませんが。)
とりあえず、年金をもらえるまでのつなぎと考えれば、選択肢の一つとして考えられます。
② 転職
定年を機に別の会社に転職することです。現役時代の人脈を利用したり、転職サイトに登録したり、ハローワークで探したりします。心機一転を期すならば、転職もありかもしれません。
しかし現実は厳しいものがあります。転職サイトに登録しても年齢がネックになったり、ハローワークに行ってみたものの、思ったような仕事がなく愕然する人も多いです。給料面のダウンは免れないでしょう。現役時代に自分がやってきたことを生かせる職場ならいいですが、全く経験がないことを今からやるのも大変です。
転職を考えているなら、現役の間に少しでも早い時期から準備する方がいいでしょう。
③起業
定年退職後は雇われる働き方をしたくないという人におすすめです。
仕事のストレスのほとんどが嫌な人間関係や嫌な仕事をやらされることから生じると言われています。もう会社で働くのはうんざりだという人は是非ともチャレンジして欲しいです。最大のメリットは自己決定権があること。そして雇われているわけではないので、自分がやめようと思わない限りいつまでも続けられることです。
シニア起業の有利な点は、60代ともなると、住宅ローンや教育費などの負担から既に解放されている場合が多く、いざとなれば退職金や貯蓄、近い将来もらえる年金をあてにできるので、若い人に比べリスクが少ないということです。
初期投資や固定費用がかかるものは避け、低リスクでできる、ほどほどの起業をダメ元で目指してみるのはいかがでしょう。
現役の間から副業の形で準備を進めるのがおすすめですが、しばらくは再雇用などの仕事をしながら準備を進め、満を持して起業するのもいいですね。
まずは月5万円から10万円程度を目標に、自分がやりたいことを、やっていて楽しいことを始めてみるのはいかがでしょう。
準備3 時間の使い方を考える
人生100年時代とは言え、令和元年の女性の健康寿命は75.4歳(令和5年版高齢者白書)です。
今はまだまだ元気でも、今後、歳を重ねれば重ねるほど体力も弱まり、不具合も出てくるでしょう。75歳くらいから思うように活動できなくなるかもしれません。
時間は有限です。折角定年退職して自由な時間を手に入れたのですから、今こそ誰に遠慮することなくやりたいことどんどんやりましょう。
まとめ
・定年後の不安は未体験なことへの不安です。
・不安を拭い去りるために将来をシミュレートして、今からしっかり準備しておきましょう。
・お金、仕事、やりたいこと、社会や人とのつながり等々、自分の時間の中で満足度が最大になるような最適解を探していきましょう。