手塚治虫「火の鳥」展に行ってきました

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東京シティビューで開催中の「火の鳥」展に行ってきました。
サブタイトルに、―火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴―とありますが、企画監修の福岡伸一さんの思いがまさに表れている言葉だと思います。

火の鳥は 1954年の黎明編(漫画少年版)から始まり、1989年2月に亡くなる前の1988年まで描き続けられた手塚治虫のライフワークです。

「黎明編」「未来編」「ヤマト編」「宇宙編」「鳳凰編」「復活編」「羽衣編」「望郷編」「乱世編」「生命編」「異形編」「太陽編」の12編、加えて少女クラブに連載された「エジプト編」「ギリシャ編」「ローマ編」で構成されます。
その後の展開として「大地編」「再生編」「現代編」の、シノプス、構想が残っています。

紀元前から西暦3000年を超える未来までの時間を、遠い過去と遠い未来を始めと終わりとする振り子のように、過去と未来を交互に描きながら「生と死」「輪廻転生」をテーマに物語が進みます。振り幅は徐々に狭まり、最後は現在に収斂していく構造です。

展覧会は3部構成になっています。

エントランスの「火の鳥・輪廻シアター」は、火の鳥の世界感を表すシアタールームで、大きなスクリーンに火の鳥の様々なシーンが映し出されます。そして背景には六本木ヒルズ52階から眺める東京のパノラマが広がります。

第1章 生命のセンス・オブ・ワンダー では、
時空を超えた壮大な火の鳥の全体像が年表形式のパネルとともに示されます。また着想の起点としてストラヴィンスキーの「火の鳥」やソ連のアニメーション「イワンと仔馬」への言及もあります。

第2章 読む! 永遠の生命の物語 では、
黎明編~太陽編までの約400点の原画が、「福岡伸一の深読み!」解説とともに展示されています。大量の原稿に見入っていると、昔、自分が読んだ頃の記憶が蘇るとともに、それぞれの物語に一気に浸ることができます。まさに火の鳥ワールドです。

第3章 未完を読み解く では、 
物語の結末についての福岡さんのひとつの答えが考察されています。

火の鳥は遠い過去と未来から段々と現在に振り子の幅が収斂する構造で描かれています。ですので、結末は現在に集約されるはずです。

手塚治虫は、自身にとっての現代とは自分の体から魂が離れる時をさすと解釈していて、自身の中にあるエネルギー体が、何らかの形で羽化する時がその時であり、(結末を)死ぬ瞬間に一コマでもいいから描いて見せると、角川春樹氏との対談で語っています。(「対談・火の鳥と現代」((『ニュータイプ100%コレクション火の鳥』1986.12.20発行))

その結末について福岡さんがひとつの回答を示しています。

これはなかなか説得力があって、共感できるラストシーンの解釈だと思います。

ヒントとなるのが、2つの「INTERMISSION」。

1971年にCOMに掲載された「休憩INTERMISSION火の鳥またはなぜ門や柿の木の記憶が宇宙エネルギーの進化と関係あるか」と、1978年マンガ少年に再録された「休憩INTERMISSION火の鳥というタイトルでなくてもよいというわけ」です。

この2つのINTERMISSIONについては今回の展覧会で初めて知ったのですが、手塚治虫の思いが端的に表現されていると思います。 

生きものが死ねば そのエネルギーははなれて また 空中にちらばる
あたらしい個体がうまれればまた吸収される

この銀河系宇宙が いや 大宇宙が創造されたとき
その大きなエネルギーは宇宙に充満し・・・・・・
ちょうど原子宇宙核がくだけとんで一つ一つの星になったようにエネルギーも・・・・・・
無数のエネルギーのかたまりのわかれました
もちろんそれは ぼくたちの考えているエネルギーとはとほうもなくちがうものかもしれない
しかしそれは宇宙がつづくかぎりなくならず
ながい ながい進化をつづけているのかもしれない
その進化のほんのわずかなチャンスに有機物質とむすびついて生命になる時がある・・・・・・
生命とはこの宇宙エネルギーのほんの一しゅんの仮の姿なのだろうか
僕は火の鳥の姿を借りて 宇宙エネルギーについて気ままな空想をえがいてみたいのです


「火の鳥」の結末はぼくが死ぬとき はじめて発表しようと思っています

「休憩INTERMISSION 火の鳥またはなぜ門や柿の木の記憶が宇宙エネルギーの進化と関係あるか」より

そして、もう一つのキーワードが角川春樹氏との対談にも出てきた「羽化」です。

COM版のINTERMISSIONの最後のコマが今回のチラシのメインビジュアルになっています。このビジュアルがすべてを表していると思います。 

そして、これらのことから考察した、福岡さんによる、火の鳥の最後の一コマの想像図も納得できます。

さて、私は中学の頃に初めて火の鳥を読みました。時折読み返しますが、一番好きなのはなんといっても「未来編」です。未来編で語られる手塚治虫の「生命観」、特に「宇宙エネルギー」という概念。これには結構影響を受けました。そしてこれは福岡さんの説く「動的平衡」の概念とも相通じる世界です。

火の鳥の壮大な世界、改めて読み返したいと思いました。

 手塚治虫 「火の鳥」展 ー火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴ー
 会期:2025.3.7~5.25
 会場:東京シティビュー

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この記事を書いた人

定年後もフルタイムで仕事を続けている均等法1期生。
定年後の不安を解消するため、お金の勉強をスタートしました。
新米のファイナンシャルプランナーでもあります。

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