老後の3大不安は本当か

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先頃、日経新聞の1面に、 “「70歳以降働く」最多39% 将来不安「経済」7割、「健康」を上回る” という記事が掲載されました。(R6.2.19朝刊)

1面トップに掲載されたインパクトのある記事でした。何故なら、老後の心配事の第1位は長らく「健康」だったのに、「お金」に変わったということ。そして、それを裏付けるように、「70歳以降も働くという人が最多の39%になった」という結果だったからです。

このデータは、日経リサーチが2023年10月~11月、18歳以上の男女を対象に行った郵送世論調査に基づいています。回答数は1607件、有効回答率は53.6%です。
複数回答ありの調査ですが、「自分の将来不安を感じること」の第1位から3位は下記の通りです。なお、2018年の調査開始以来、トップは健康でした。

生活資金などの経済面70%
健康       69%
介護50%

加えて「何歳まで働くつもりか」という問いに対しての回答は下記の通りです。「70歳を超えても働く」という人が39%となり、こちらも調査開始後最も高い数字となっています。

60歳~64歳11%
65歳~69歳27%
70歳~74歳21
75歳以上 18

かくして、日経新聞では、「経済面の不安は仕事を継続する選択に至る背景の一つ」と分析しています。  

他方、R5年度の「高齢者白書」(内閣府)によると、65歳以上の人の経済的な暮らし向きについて、「全く心配していない」、「それほど心配していない」が68.5%となっています。

                            R5「高齢者白書」(内閣府)

このデータは、内閣府の「高齢者の日常生活、地域社会への参加に関する調査」(R3年度)に基づいています。令和3年 12 月 6 日~12 月 24 日に60歳以上の男女4000人を対象にした郵送調査で、回答数は2435件、有効回答率60.9%です。

こちらの結果の方は、なんとなく抱いている65歳以上の人の暮らしのイメージに近いのではないでしょうか。つまり、そんなにお金を使うこともないし、手持ちのお金でなんとかなるだろうというイメージです。

例えば 2022年の10万部突破のベストセラー「ほんとうの定年後」という本のページを捲ると、

●本当に稼ぐべき額は月10万円
●生活費は月30万円弱
●年収は300万円以下が大半

坂本貴志「ほんとうの定年後」

という言葉が目に入ってきます。

周りの65歳以上の人からも、「余裕がなくかつかつという訳ではないが、自分の楽しみのために月10万ほどあればいい」という話をよく聞きます。なんとなく、「年金プラス貯蓄で何とかなるだろう、少しだけ働けばいいのかな」くらいの認識だったと思います。

では日経の調査で経済面がトップになったのはどういうことか、勝手に解釈すると、

まず日経調査は18歳以上が調査対象なので、若い層で自分の老後に対して経済面の不安が大きくなっているのではないかと思います。若い層の人たちはおそらく自分の時は今のような額の年金をもらえないだろうし、受給開始ももっと遅くなるのではないかと薄々感じていると思います。

では定年世代はどうか、多分何とかなるだろうと思っているのでしょうが、その大前提は所謂「失われた30年」が象徴する、物価は上がらないという暗黙の前提です。 

ところが物価は上がっています。日経平均株価も34年ぶりに最高値を更新しました。企業は賃上げに動きつつあります。仕事を辞めてしまった定年世代だと給料が入ってこないので、賃上げの対象になりません。貯蓄も、最低でも物価上昇率を上回る運用をしないと目減りしてしまいます。このような状況下、不安要因のトップがお金になったのではないでしょうか。

俗に老後の3大不安と言われるのはお金、健康、孤独です。

しかし、働くという選択をするとこの「健康」や「孤独」という問題は少なからず緩和すると思います。
つまり、「健康」がトップだったのはお金は何とかなるという前提の下で、はじめて「健康」と「孤独」の問題がクローズアップされていたのではないでしょうか。

60代はまだまだ元気なので、全く収入が途絶えてしまうのは精神衛生上よくないでしょう。となれば、収入ゼロという不安を和らげるため、「健康」に資すべく規則正しい生活をし、「孤独」にならないよう社会とつながり、なおかつストレスを抱えない働き方を考えてみるのはいかがでしょう。つまり、「人間関係に煩わされない」「長時間働かない」「嫌なことはやらない」働き方です。

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この記事を書いた人

昨年定年退職した均等法1期生。
定年後もフルタイムで仕事を続けています。
定年後の不安を解消するため、お金の勉強をスタートしました。
新米のファイナンシャルプランナーでもあります。

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